| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


企画集会 T12-3 (Lecture in Symposium/Workshop)

林床に生息する小型カエル類の放射性セシウム蓄積量と環境要因の関係

*高原輝彦(広島大院・総科), 遠藤暁(広島大院・工), 高田モモ, 大庭ゆりか, Wim Ikbal Nursal(広島大院・総科), 井川武(広島大院・国際協力), 土居秀幸(広島大・サステナ), 山田俊弘, 奥田敏統(広島大院・総科)

福島第一原子力発電所事故後の森林生態系における放射性セシウムの蓄積・循環メカニズムを明らかにすることは急務である。両生類は、陸水域を生活史に応じて使い分け、食物網において多様な役割をもつ。森林内の陸域と水域をつなぐ両生類の放射性セシウム蓄積状況をモニタリングすることは、森林生態系における陸水域を介した放射性セシウムの循環プロセスを明らかにできると考えられる。そこで、両生類の放射性セシウム蓄積量に影響を及ぼす環境要因を明らかにするため、2013年夏(原発事故から約2年半後)に、福島県の飯舘村、相馬市、および、南相馬市の森林に生息するタゴガエルを対象にして調査を行った。カエルの放射性セシウム蓄積量は、原発からの距離とは相関関係がみられなかったが、サンプリング場所の空間線量やリターの汚染度に応じて高くなった。カエルの放射性セシウム蓄積量と彼らの体サイズには相関関係がみられず、同一のサンプリング場所において採集された個体間で蓄積量に大きな違いがあることがわかった。このことは、カエルが利用する餌動物種の放射性セシウム蓄積量が、各サンプリング場所内においても空間的に不均質であることを示唆している。両生類は非常に高い放射性セシウム量を蓄積していたことから、森林生態系における陸水域を介した放射性セシウムの循環プロセスに強い影響を及ぼしていると考えられた。今後は、継続的なモニタリング調査を行うとともに、各カエル個体の餌動物種の同定とそれらの放射性セシウム蓄積量などを明らかにする必要がある。


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