| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


企画集会 T13-4 (Lecture in Symposium/Workshop)

微生物に学ぶ群集生態学

瀧本岳(東邦大・理)

近年、ゲノムデータの高速大量処理が可能になったことにより、微生物の群集構成(どの分類群がどれだけいるのか)の記述が現実的になってきた。また、微生物群集は、生態系の様々な機能や人の健康とも密接に関わっており、その構造と機能を管理するための学問体系が求められている。この背景に対応して、微生物を対象とした群集生態学の構築を目指す研究動向が活発化している。本発表では、まず微生物群集が担う生態系機能について簡単にまとめて紹介したあと、その生態系機能を維持・管理するうえで必要となる微生物の群集生態学の構築をすすめようとしている近年の研究をレビューして報告する。特に、微生物とマクロ生物(動物や植物)の群集生態学を比較し、その違いをふまえてより包括的な群集生態学を発展させるためのアプローチを探ることを目指しつつ、最近の研究と総説を紹介する。競争・協力・捕食・被食を含む種間相互作用、遺伝子水平伝播を含む進化、休眠を含む個体群動態時間スケールの可塑性の高さ、高い分散力など、微生物に特徴的な要因を組み込んだときに、その群集生態学はどのように構築できるのかを考察する。群集生態学のなかでも、多様性-生態系機能の関係や、メタ群集理論、種数-面積関係、生態系管理理論、レジームシフトの警告シグナルなどのトピックが、微生物群集を対象にどのように適用できるのかを考えたい。


日本生態学会