| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


企画集会 T15-2 (Lecture in Symposium/Workshop)

シヘンチュウ類昆虫寄生性線虫の生活環は寄主の発生消長と同調しているのか? 

吉田睦浩(九州沖縄農研)

シヘンチュウ類は昆虫類やクモ類の寄生虫としてよく知られており、寄主のクチクラに穴を開けて脱出し、寄主を死に追いやるため、古くから害虫の天敵として研究されている。シヘンチュウ類の感染様式は①孵化幼虫(2期幼虫として孵化)が寄主を探索し、経皮感染するタイプ、②雌成虫が寄主の餌に産卵し、経口感染するタイプに大別される。演者はタイプ①のシヘンチュウの生物防除への利用研究を行うため、モンシロチョウから得られたHexamermis sp.およびウンカ寄生性のAgamermis sp.の飼育・増殖を試みている。Hexamermis sp.の生息地(茨城県つくば市)では、9月から11月にかけて非常に高い寄生率が観察されるが、春季はモンシロチョウ幼虫の個体数が少ないせいもあり、被寄生個体は非常に少ない。本種をモンシロチョウの防除素材として考える場合、春季に産卵する個体群を作成する必要がある。そこで、成熟した雌成虫飼育容器に1月に雄成虫を放した結果、2月に産卵、3月末に孵化が観察され、モンシロチョウ幼虫に対する感染も観察された。さらに、8月に交尾した雌成虫では、早い個体で9月に産卵、11月に孵化、遅い個体で12月に産卵・3月に孵化が観察された。一方、昨年から飼育を始めたAgamermis sp.では、5月下旬に水田土壌から得られた成虫十数頭のうち、1雌が6月上旬に産卵を始め、7月中旬に孵化が観察された。その後、10月上旬には雌成虫体内に卵がほとんど見られなくなった。孵化幼虫が得られた時期はウンカ類の発生とほぼ重なっていた。また、9月下旬から10月上旬にウンカ類から得た亜成虫は年内にはほぼ成虫脱皮を終えた。現在、雌雄を同居させて室温に置き、採卵を試みている。本講演では飼育によって得られた知見を基に、シヘンチュウは寄主の生活環と本当に同調しているのかについて、考察したい。


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