| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


企画集会 T17-3 (Lecture in Symposium/Workshop)

捕食者相の単純な海洋島におけるメジロの対捕食者戦略

堀江明香(大阪市立大学)

南西諸島には多くの固有生物が生息しており、現在、世界自然遺産への登録に向けた動きが活発になっている。島、特に隔離島嶼の生物は、その特殊性で注目を集めることが多く、形態・生態の特徴やその進化的背景、他の島や大陸との遺伝的なつながりなど、多くの魅力的なテーマが存在する。しかし、島の研究の魅力はそれだけではない。隔離された島は生物の移出入が困難なため、生物相が単純になりやすい。そのため、通常は複雑すぎて検討できない種間相互作用を単純化できるというメリットをもつ。本講演では、そのようなメリットを活かし、捕食者相が単純な海洋島:南大東島において、ダイトウメジロという小鳥が捕食者にどのように対応しているかを調べた研究を紹介する。

南大東島は沖縄本島の東、約400kmに位置する海洋島で、もともとメジロの巣を襲う捕食者はいなかった。現在も、巣を襲っているのはクマネズミとモズだけであり、演者は5年にわたって、両捕食者へのメジロの対捕食者行動(巣場所選択・捕食者への警戒)を個体レベルで調査してきた。ネズミとモズでは襲いやすい巣の形質が少し異なり、両者とも周囲から見えやすい巣を襲う傾向がある一方、低い位置の巣はネズミに、高い位置の巣はモズに襲われやすい傾向があった。これを利用して、メジロが捕食者への対処として、経験に伴う巣場所の改善や、巣場所に応じた警戒の強化ができるのかを検討した。具体的には、親鳥が経験と共に巣場所を改善できるかを、巣場所を選ぶ雄親の経年追跡から、自身の巣場所に応じて危険な方の捕食者に強く警戒するかどうかを、親鳥に両捕食者の剥製を提示する野外実験から検討した。詳細は集会で紹介するが、南大東島のメジロは繁殖経験を積むことで捕食者のリスクを認識し、営巣場所の改善やリスクに応じた警戒強化が可能なようだ。


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