| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
企画集会 T17-4 (Lecture in Symposium/Workshop)
鳥類は観察が比較的容易な分類群で広域分布データを得やすく、さらに移動能力が高く能動的な環境選択を行うことから、生物指標としての有効性が高いと考えられる。中でも、キツツキ類は営巣や採餌場所として大径木や枯死木に依存することから、自然度の高い老齢林の指標種としての有効性が指摘されている。本研究では、世界自然遺産候補地として、順応的管理が求められている「奄美・琉球」の中核地である沖縄島北部やんばる地域の森林生態系の健全性指標として、同地域に固有の希少キツツキ類であるノグチゲラの有効性について検討した。
鳥類の分布調査は、沖縄島北部名護市の源河川流域以北(265地点)で定点観察法とプレイバック法を併用して行った。環境要因として、植生タイプ、林齢、標高、外来種(マングース、ネコ、クマネズミ)などのデータをGIS上で整備し、出現鳥類種の分布決定要因を解析した。ノグチゲラの出現確率と平均林齢には正の相関があり、さらに、マングースの密度指標と負の相関を示した。ノグチゲラは分子系統学的解析から、中琉球が海域により隔離された前期更新世に種分化したと推定されている。ノグチゲラは沖縄島の成立とともに独自の進化を遂げ、他のアカゲラ属キツツキには見られない地上採餌行動を進化させたため、マングースの捕食の影響を受けやすくなったと考えられる。ノグチゲラは、大陸島の森林生態系における多様な進化の事例の一つとして、老齢林の指標種としてだけではなく、侵略的外来種であるマングースの管理指標としても有効性を持つことが示唆された。発表では、ノグチゲラ以外の鳥類種と合わせて、やんばる地域の森林生態系における鳥類の生物指標としての有効性について議論する。