| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


企画集会 T18-1 (Lecture in Symposium/Workshop)

ホソヘリカメムシの交尾前性選択における武器形質と求愛行動の役割

洲崎 雄(京大・院・理)

性選択は、誇張形質や誇示行動など、オスの繁殖成功に寄与する様々な形質の進化を導く。性選択は、メスの配偶者選択(FMC)とオス間競争(MMC)という二つの過程に大別される。FMCではメスの利益の指標となる形質が、MMCではオスの資源獲得能力に関係する形質が選択される。FMCとMMCは互いに排他的な関係ではなく、相互に影響し合っていることが理論研究で示唆されている。また、FMCやMMCの帰結がある一つの形質だけではなく、複数の形質によって決定していることが、最近の研究で明らかになりつつある。さらに、これら二つの過程で、選択される形質が異なる場合も存在する。したがって、オスの複雑な性形質の進化を理解するためには、1)FMCとMMCで選択される形質と、2)FMCとMMCの関係、3)オスの交尾成功度とメスの適応度の関係を明らかにする必要がある。

ホソヘリカメムシは、オスが誇張された後脚を用いて交尾場所を巡る儀式的な闘争を行う。また、オスは交尾の前に前脚でメスの触角をタッピングする求愛行動を行う。本研究では、1)MMCの勝敗に寄与する形質と、2)求愛行動と誇張形質がFMCに与える影響、3)魅力的なオスとの交尾によって、メスが直接的・間接的利益を得ているかどうかを調べた。

その結果、MMCでは、体サイズと後脚サイズが大きい個体が勝ちやすかった。また、オスの魅力度(メスの選好性)と求愛率(触角タッピング回数/秒)、後脚サイズとの間には正の遺伝相関があった。さらに、オスの魅力度と求愛率、誇張形質サイズは有意な遺伝分散を持っていた。

以上より、1)本種のオスの交尾成功は、求愛行動と後脚サイズという二つの形質によって決定している;2)メスは複数の形質を選択の指標にすることによって、間接的利益を最大化していることが明らかになった。


日本生態学会