| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
企画集会 T18-4 (Lecture in Symposium/Workshop)
フサエカメレオン属Furciferは、オスが頭部にツノ状の柔らかいオーナメントをもつ種ともたない種を含み、その機能はよく分かっていない。独立に複数回進化したことが示唆されていることから、フサエカメレオン属のオーナメントはオス特有の選択圧を受け、その選択圧の種間差によって現在のオーナメントの種間多様性が進化したことが推察される。
フサエカメレオン属におけるオーナメントの機能とその多様化メカニズムを検証するため、マダガスカルのアンカラファンツィカ国立公園でオーナメントをもたないウスタレカメレオンF. oustaletiとオーナメントをもつハナツノカメレオンF. rhinoceratusを用いて、オス間における闘争様式の種間比較を行った。その結果、両種共にまずディスプレイによって儀式的闘争を行い、それで決着がつかなかったときのみ直接相手を攻撃した。ウスタレでは体サイズの大きさによって儀式的闘争の勝敗が早々に決まっていた一方で、ハナツノの闘争の勝敗は体サイズに相関しなかった。ハナツノでは、勝者の敗者に対する相対オーナメント長がより大きいほど闘争がエスカレートせず、より早く決着がつくことが示唆された。さらに、ハナツノのオスのオーナメント長を人為的に伸ばして、より大型の通常オスと対面させたところ、オーナメント長を延長したオスが闘争に勝った。ウスタレは1年以上生き、体サイズが個体群内でばらつく一方、ハナツノは最長1年程度しか生きず同一コホートの個体のみで個体群が構成されるため、体サイズのばらつきが小さい。似たサイズの個体ばかりであることから、体サイズを闘争の勝敗決定形質として用いることのできないハナツノにおいて、オーナメントがオス間の繁殖機会をめぐる闘争に重要なシグナルとして役立っている可能性が示された。