| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


企画集会 T19-1 (Lecture in Symposium/Workshop)

趣旨説明; 生物多様性セーフガード 

奥田敏統 (広島大学・総合科学研究科)

全球レベルでの温室効果ガスの約2割が森林由来であることから、森林減少・劣化の防止による排出削減対策(以下REDD, Reducing Emissions from Deforestation and Forest Degradation)が提唱され、途上国が温室効果対策として取り組める効果的な吸収源活動として注目を集めている。一方で熱帯林が集中する途上国では自然資源への依存度が高く、森林の囲い込みや生物資源へ利用制限は、社会的・経済的な混乱に招く。さらに森林の炭素ストック量の確保のみに注意が向けられるあまり、生物多様性保全が軽視されがちになることも危惧されている。こうしたことから、REDDプロジェクトの実施に当たっては、対象地域の社会経済的便益、及び生物多様性への配慮がセーフガード項目として設定されている。とはいえ、こうしたセーフガード項目の要求を満たしREDDを適正に運用・実施するためには「生物多様性保全と地域社会便益の両者を満たすような科学的な指標」が必要である。

本企画集会では、近年、森林減少・劣化が著しいミャンマーの農山村社会をREDDプロジェクトの対象地と見立て、REDDセーフガード項目を適用する際の基準・指標の抽出の可能性について検証することを目標とした。具体的には、当該地域での土地利用変遷と森林破壊との関連性や、生物資源を利用しながらも二次林植生を維持しようとする農村社会の経済的な自律性などについて、これまでの研究事例を紹介しながら「生物多様性」と「地域住民」の相乗便益の可能性について探る。その上で両者のバランスを最適化できるような「基準・指標」の可能性についても議論する。


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