| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
企画集会 T19-3 (Lecture in Symposium/Workshop)
ミャンマー、バゴー管区モシュエ保護林において住民の林産物利用とそれが森林生態系に及ぼす影響を調査した。モシュエ保護林は首都ネピドーの近隣にあり、周辺には多くの住民がいる。住民の多くは農業を営んでいるが、林産物の採取で生計を立てているものもいる。保護林の林縁部は水田と境界をなしていることが普通で、保護林内を幹線道路が通っていた。保護林内には天然の林と共に政府が管理する木材生産のための植林地がある。住民は植栽された樹木を伐採することはできないが、自然更新した樹木を個人消費の目的ならば伐採、使用することができる。しかし林内には植栽木の伐採の跡も多く残されていた。
モシュエ保護林内の森林植生を調べるために、林内の様々な場所97か所で植生調査を行った。すると幹線道路から離れるにつれて、森林が劣化していく傾向のあることが分かった。幹線道路沿いは目立ちやすいため、住民は違法な伐採をしにくく、かつ政府による管理が行き届いているため、森林劣化の程度が低く抑えられていると考えられた。また劣化した森林ではタケ類の優占度が増す傾向も明らかとなった。伐採により空いた空間をタケ類がいち早く埋めてしまうのだろう。さらに劣化した森林は生物多様性が低いことも明らかとなった。
以上より、この森林もしくは森林からの林産物を持続的な方法で利用するためには(1)道路から離れた森林も管理し、伐採により劣化しないようにすること、(2)伐採時には後継木を植栽するなどし、竹の侵入を抑え、伐採後の樹木の更新を進める工夫が必要なことが明らかとなった。