| 要旨トップ | ESJ62 自由集会 一覧 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
自由集会 W03 -- 3月18日 15:30-17:30 H会場
近年の古生態学的研究によると,10万年周期をもって地球規模で繰り返してきた氷期・間氷期の気候変動のなかで,スギ,コウヤマキ,ヒノキ科などの温帯性針葉樹が優占する時期がほとんどを占めており,間氷期であっても照葉樹のみが優占する植生は認められない(Miyoshi et al.,1999, Hayashi et al.,2009など)。また,完新世でも,約1000年前以前には,西日本の日本海側地域ではスギが優占する針葉樹林が拡がっていたことが明らかになっている(高原,1998)。太平洋側地域でも照葉樹林にスギ,ヒノキ,コウヤマキ,モミなどが高率で伴う(北川,2009など),または,スギ,コウヤマキが優占する地域が認められる(叶内,2005)。
また,縄文時代以降,様々な樹木が人々に利用されてきたが,古代には,スギは日本海側,ヒノキは太平洋側といった木材の利用の地域的な違いがあることも示されている(鈴木,2002)。
以上のような研究成果から,本来,人間活動の影響が少ない2000年前以前には,暖温帯域では,常緑広葉樹にスギ,ヒノキ,コウヤマキ,モミ,ツガなどの温帯性針葉樹を伴った植生が存在していたが,古代からの人間活動によって利用され,現在では限られた分布をしていると考えられる。
この自由集会では,このような温帯性針葉樹林の位置づけを重視した日本の植生帯論について議論できればと考えています。
[W03-1] 大型植物遺体からみた第四紀における温帯性針葉樹林
[W03-2] 氷期間氷期変動に伴うスギと温帯性針葉樹の分布変遷
[W03-3] 東北地方における完新世後期のスギの拡大
[W03-4] 四国地方における最終氷期以降の温帯性針葉樹の変遷
[W03-5] 主に日本海側地域における完新世後期のスギ埋没林
[W03-6] 更新特性からみた温帯性針葉樹