| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(口頭発表) G3-26 (Oral presentation)
瀬戸内海 芸予諸島の各島々からアカネズミApodemus speciosusを採集し、氷河期後に形成された島による隔離が集団の遺伝的分化と多様性に与えた影響を評価した。昨年度、本大会において、以下の2点について報告した。1.ミトコンドリアDNA Dloop領域においては、島嶼集団で顕著に遺伝的多様性が低下している。2.旨味受容体遺伝子Tas1r1においては、各々の島固有の遺伝的多様性が見られる。これらの結果は、島嶼において集団サイズが低下していることと、味覚に関して島固有の適応が生じている可能性を示唆する。本研究では、苦味受容体遺伝子Tas2r138の遺伝的多様性を評価すると共に、糞を対象としたDNAバーコーディング法により採餌品目を明らかとし、味覚受容体遺伝子の多様性における自然選択の関与を検証した。その結果、苦味受容体遺伝子については島固有の多様性が明らかとなったが、旨味受容体遺伝子とは異なる傾向を示した。ミトコンドリアCO1遺伝子、および葉緑体RbcL遺伝子を指標としたDNAバーコーディングの結果、2~5月の春季に採集したアカネズミの糞から、主に蛾やドングリのなるコナラ属Quercusの木が同定された。春季に餌となる動物が出現するまでの間、冬季に貯食していたドングリがアカネズミの重要な餌資源となっていることが示唆された。一方で、動物と植物の糞における出現頻度と、旨味、および苦味受容体遺伝子の多様性の間で顕著な相関は見られなかった。