| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(口頭発表) G3-29 (Oral presentation)

河川における人為的な影響は生物群集の均質化をもたらすか?

*森照貴(東大・総合文化), 内田圭(東大・総合文化), 萱場祐一(土研・河川生態)

自然河川の環境は、気象や地質の特性に起因した地域間での変異が存在する。これらの変異に応じて、河川に生息する生物相も地域によって異なる。しかし、ダムの建設は河川の環境を改変し、流量レジームの地域ごとの違いを消失させ、均質化をもたらすことが既存研究により示されている。河川底生動物群集は流量レジームの変異の影響を強く受けることから、流量レジームの均質化は底生動物群集におけるβ多様性を減少させる可能性が考えられる(biotic homogenization)。さらに、流水と一緒に流下する土砂の大部分はダムに補足されるため、ダム下流域では河床を構成する礫径の大型化が進むことが示されている。河床に生息する底生動物は、河床の礫径などに対応した群集を形成することから、礫径の単純な大型化に伴う均質化についても、底生動物群集の均質化をもたらすと考えられる。そこで、本研究ではダムの上流と下流域における流量と河床を構成する礫径、そして底生動物群集のデータを集め、ダムは流量や河床といった環境の均質化をもたらすのか、そしてこの環境の均質化は生物群集の均質化をもたらすのかについて検証を行った。既存研究と異なり、日本の河川ではダムによる流量改変の度合いが小さく、流量の均質化はあまり生じていなかった。しかし、ダム下流では上流に比べて、河床の礫径は大型化するとともに変異が小さくなる傾向が見られた。本発表では、これら環境の均質性に基づいて、底生動物群集の均質化がどのようなプロセスで生じるのかについて議論する。


日本生態学会