| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(口頭発表) G3-31 (Oral presentation)
全国規模での生物多様性損失が進行する中、地域全体の種多様性(γ多様性)保全を効率的に進めるためには、対象域内における生物多様性の空間分布を理解する必要がある。半自然草原では、近年の管理放棄により小面積化が著しく進行しており、草原維持・管理再開活動が各々の草原で試みられている。しかしながら、残存する半自然草原に対し、絶滅危惧種を含む地域全体の種多様性保全を達成するために、保全努力を分配すべき重要な空間スケールの検討は不足している。
本研究では、全国規模での半自然草原の植物群集における種多様性の空間パターンを検証し、種多様性保全に寄与する空間スケールを検証した。継続的な管理(火入れ/採草)により維持されている12の山間部半自然草原(九州~東北)を対象として植生調査を行った。加法分割解析(additive partitioning)により、γ多様性を3つの階層空間スケール(西‐東日本間、草原間、コドラート内・間)に分割し、3植物群(全種、草原生種、絶滅危惧種)間で比較した。
結果、草原間でのβ多様性がγ多様性に大きく貢献していることが明らかとなり、各々の草原における種組成の特異性が示された。次いで、草原生種においてはコドラート間、全種および絶滅危惧種においては地域間スケールでのβ多様性の寄与が示された。
以上より、全国規模で半自然草原の植物種多様性を効率的に保全していくためには、草原間スケールでの種多様性を高めるとともに、より広域スケールでの保全計画の必要性が示唆された。