| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(口頭発表) G3-32 (Oral presentation)

富士北麓の植林伐採地と半自然草原のチョウ群集

大脇淳*, 中野隆志, 北原正彦(山梨県富士山研)

多くの絶滅危惧種が生息している半自然草原は、現在、日本から急速に失われつつあるため、伐採後間もない若い植林地には半自然草原の代替ハビタットとしての機能が期待される。そこで、山梨県の富士北麓において、半自然草原4地点、草原的な若い植林地3地点(伐採後4~7年)、様々な森林環境16地点(アカマツ林、カラマツ植林、シラビソ植林、落葉広葉樹林、針広混交林)において、2015年6~10月に計6回チョウ群集の調査を実施した。

調査の結果、49種630個体のチョウが記録され、そのうち絶滅危惧種・準絶滅危惧種(以下、RD種)は5種76個体であった。種数、個体数ともに、森林地点よりも半自然草原や若い植林地の方が多い傾向にあったが、半自然草原の中ではばらつきが大きかった。RD種は半自然草原と若い植林地のみで記録された。

半自然草原と若い植林地のみに焦点を当てると、チョウの種数、個体数は吸蜜源となる花の量が多いほど増加した。一方、草丈が高くなるほどチョウの種数、個体数は減少した。特に、ススキが優占する草丈の高い半自然草原では、花の量や食草が少ないせいか、チョウの種数、個体数ともに極めて少なく、RD種は一種も観察されなかった。本調査で観察された5種のRD種のうち、4種は半自然草原で観察され、そのうち3種はほぼ半自然草原のみで観察された。若い植林地では3種のRD種が観察され、1種は若い植林地のみで観察された。また、RD種のウラギンスジヒョウモンにとって、若い植林地の一部は良好なハビタットとなっていることが示唆された。

以上の結果から、RD種の生息には半自然草原の質が重要であること、若い植林地は一部の絶滅危惧種のハビタットとして機能していることが分かった。


日本生態学会