| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(口頭発表) G3-33 (Oral presentation)
都市化された地域において開発を逃れ残された森林、すなわち都市近郊林は、都市住民にとって身近な自然として大変重要なものである。また、当該地域における生物多様性の観点からみても、森林生植物のホットスポットとして適切な保全の必要性は大きい。しかし都市近郊林は、孤立・小面積化した林分が多いこと、かつて里山林として利用されていた林分の放置による質的変化など、保全の観点から様々な問題を抱えている。一方で、多くの人口を抱える都市近郊域では、ボランティアなど保全活動の担い手も潜在的に多く、市民活動による保全が行われている林も多い。本報告の対象地の東京都武蔵野市の境山野緑地は、市民団体「武蔵野の森を育てる会」による保全が行われている。
ここでは繁茂する特定の樹種、ササ類、外来種の選択的除去を行い、植生調査と毎木調査によって毎年モニタリングを行っている。モニタリングによって林分構造や種組成の状態を毎年確認しながら作業にフィードバックさせることにより、景観や防犯などといった都市域の緑地でよく起こる問題と折り合いをつけながら、植生や植物相の適切な保全を目指している。その結果、261種の在来種を維持することができている。一方で外来種・栽培種が128種含まれ、これらは常に周囲から侵入を続けることから、都市近郊林の保全のために継続的な管理は不可欠である。これらの担い手として市民の力は非常に大きいが、適切な管理のためには一定のスキルを身につける必要もある。そこで、市民自らでモニタリング調査を行うことは、ただ見るだけや作業するだけでは気がつかないようなことを、客観的な情報に基づいて理解することができる。さらに、対象地の価値や問題点を共有でき、現場感覚を高められるという点も重要である。