| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(口頭発表) J2-22 (Oral presentation)

ペアエッジ法の拡張による2次元格子空間上の集団存続可能性の評価

*鹿山大輔(静岡大学),佐藤一憲(静岡大学)

Ellner et al.(1998)は,格子空間上の集団が空き地に侵入するスピードを求めるための解析手段としてペアエッジ法(pair-edge approximation,PEA)を考案した.この方法を用いると,先行研究で得られている平均場近似(MF)やペア近似(PA)などによる結果と比べて,シミュレーションで得られる集団の存続可能な出生率の閾値に近い値を求めることができる.ここで,Ellner et al.(1998)は,無限に広がった1次元格子空間上と2次元正方格子空間上でPEAによる解析をおこなおうとしているのだが,2次元正方格子空間では,計算が複雑になってしまうために有限サイズの空間を使って近似的な計算をしている.そこで,本研究では,Ellner et al.(1998)で用いられている近似手法を応用し,PEAの2次元無限正方格子空間への拡張を模索する.

Ellner et al.(1998)では,1次元無限格子空間上での計算が成功しており,これを利用して,1次元格子空間を3段重ねた形の,3行無限列の格子空間での近似計算方法を考案している.本研究では更に1次元格子空間を積み重ねた形の5行の格子空間について,3行の格子空間の計算手法を応用した.また,GPA(growing phase approximation)と名付けられた, 集団の先頭付近の個体密度を0で近似する手法により,2次元無限正方格子空間上での計算を考案した.これらの計算方法を用いて集団存続可能性を評価したところ,集団が存続できる出生率の閾値は,行数を増やすにつれて減少していくことがわかった.本講演では,2次元空間について,PEAによる5行格子空間上及び無限格子空間上での計算方法とその結果について解説し,今後の展望を紹介する.


日本生態学会