| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-113 (Poster presentation)
近年、急激な都市化による生物多様性の減少が世界各地から報告されている。モンスーンアジアでは、平野部の都市化に伴い、かつて水田等として利用されてきた土地が、宅地や商用地などの人工地になる土地利用の変化が生じている。その為、都市化は水田周囲に維持される高い生物多様性をもつ里草地へ著しい影響を与えてきたと考えられる。
先行研究から国内の都市部の里草地では多年生草本が減少し、一年生草本が増加する傾向が報告されている。植物の種構成の変化は、生物間相互作用ネットワーク(送粉ネットワーク)を大きく変化させることが予測される。多年生草本は一年生草本と比べ、大きな花弁・長い花筒を持つと考えられ、長口吻送粉者は短花筒花よりも長花筒花を利用する傾向があるため、多年生草本種の減少は、それに依存する長口吻種の減少を引き起こすことが予測される。
そこで、本研究では以下2つの仮説を設定し、都市化が送粉ネットワークにもたらす影響について検証を行った。都市部では、①植物と送粉者の種数、個体数が減少する。②短花筒・短口吻を持つ植物・送粉者種が増加する。
調査地は阪神地区の里山から都市の水田(9サイト)を設定した。調査は4月~12月の計9回行い、開花虫媒植物種と開花数、送粉者種と個体数、訪花植物種を観察し記録した。観察した植物の花筒長、送粉者の口吻長を測定し、都市化に伴い機能的送粉ネットワークがどのように変化しているかを解析した。また、都市化の指標として調査地周辺の人工地面積を用いた。
本研究では計8174個体の送粉者が採集された。内訳として、ハナバチ30.5%、ハナアブ42.6%、ハエ10.4%、コウチュウ4.3%、チョウ9.1%の送粉者が確認された。
以上のデータに基づき、各調査地において量的な送粉ネットワークを作成し、上述した仮説について検証を行った。