| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-117 (Poster presentation)
マルハナバチは多くの植物種の重要な送粉者であり、その生態の解明は送粉者-植物間相互作用の理解に不可欠である。しかし、長距離にわたる飛行の追跡が困難などの理由から、ある地域で採餌しているマルハナバチが、その地域のコロニーに由来するのか、別の地域のコロニーに由来するのかは、ほとんど明らかにされていない。本研究では、中部山岳国立公園立山の高山帯で採餌しているマルハナバチが、高山帯のコロニーに由来するのか、それとも低標高帯のコロニーからの出稼ぎなのかを明らかにするため、以下2つの側面から調査を行った。
①低標高帯から高山帯の、各種マルハナバチの活動フェノロジーと植物種の開花フェノロジー調査。この調査から、高山帯では、ヒメマルハナバチが開花期全体を通じて全てのカーストが採餌を行っているのに対し、オオマルハナバチは働きバチだけが特定の期間のみ採餌を行っていることがわかった。②フィーダーを用いた実験:高山帯にフィーダーを設置し、繰り返し採餌する個体の採餌間隔と飛行方角をもとに、巣場所の推定を行った。この結果から、高山帯で採餌しているヒメマルハナバチの働きバチは近くのコロニーに由来し、オオマルハナバチの働きバチは低標高帯方面の、比較的遠くのコロニーに由来していることが推測された。
総じて、立山の高山帯で採餌しているヒメマルハナバチは高山帯で営巣しているコロニーに由来し、オオマルハナバチは低標高帯のコロニーからの出稼ぎであることが示唆された。オオマルハナバチが低標高帯からの出稼ぎであることから、高山帯と低標高帯の群集間に、オオマルハナバチを介した相互作用が存在することが伺えた。