| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-120 (Poster presentation)

鳥類各種による種子散布環境の推定と散布貢献度の評価

*加藤大貴,小池伸介 東京農工大学

液果を結実させる樹木は主に動物による種子の散布(周食型種子散布)を行っている。種子散布者のうち森林性鳥類の多くは果実を主要な食物資源としていることからも、これらの樹木の種子散布に大きく貢献していると考えられる。周食型種子散布においては、各散布者の植物の繁殖への貢献度をSeed Dispersal Effectiveness(以下SDE)によって評価することができる。SDEは種子散布の量的および質的視点によって評価されるが、質的な視点のうち散布環境の質を検討した先行研究は限られる。

一般的に質の高い散布場所とは種子の発芽・生育のセーフサイトといえる。一方、植物は複数の動物種に種子の散布を依存することが多いが、各動物種の環境選択性の違いにより、全ての散布者が植物のセーフサイトに種子を散布するとは限らない。そのため、各散布者のSDEを、散布環境の質を含めて包括的に評価することが求められる。

本研究では、鳥類の量的および質的SDEを評価するため、陽樹である夏に結実するヤマザクラと秋に結実するミズキを対象に、①鳥類の果実の持ち去り行動、②鳥類の環境選択性、③環境別(林縁、ギャップ、林内)の散布種子の回収、の3つの調査を行った。その結果、ヤマザクラでは6種、ミズキでは9種の鳥類の果実の持ち去りが確認された。さらに、セーフサイトと考えられるギャップでより多くの鳥類による種子の散布が確認された。また、鳥種によって環境選択性が異なったことから、量的なSDEの高い種と質的なSDEの高い種では、必ずしも一致しなかった。両樹種の間では、秋は渡り期にあたることから、散布者相が変化し、同じ鳥種でも環境選択性の季節変化により、SDEが変化する種も存在した。今後は対象樹種や調査地域を広げ、鳥類各種のSDEの正確な評価を行うことが、種子散布者としての鳥類と樹木との相互作用の理解に重要であると考えられる。


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