| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-121 (Poster presentation)
都市において鳥散布は、建物や道路などにより分断化された自然をつなぐ役割を担っていると考えられる。そこで本研究では、千代田区内の小公園を中心とした計12地点において、鳥類と実生、そして木の実の関係を調べることによって、都市の中で鳥類が形成したエコロジカルネットワークについて明らかにすることを目的とした。
調査は春季(4月)、夏季(8月)、秋季(11月)に行った。
春季と夏季には発見した鳥類と実生の種類と数を記録した。秋季に実生の増加が特に顕著だった1地点において、木の実と実生の種類、位置、数を記録した。秋季の調査は子供向けのイベントとして計画されていたので、簡単な調査を計画し、学生が作成した資料に基づき調査を行った。
春季と夏季の調査の結果、3地点において実生の増加が顕著であり、春季に見られた鳥の数が多かった。このことから春季については鳥による種子散布の可能性が考えられる。
秋季の調査の結果、実生と種子の関係から、公園内のみで鳥散布が行われただけでなく、公園外から公園内への鳥散布が行われた可能性があると分かった。
以上の調査から、都市において、鳥による種子散布の可能性があるということ、そして種子が鳥によって別の緑地に運ばれている可能性があるということが分かった。都市の自然環境において鳥の役割は非常に重要であり、鳥が来やすい環境を作ることによって、エコロジカルネットワークの形成が図れることが示唆された。
また、今回の調査は誰にでもできるような簡単な方法で調査を行っており、意欲のある市民の参画が可能である。今後、シチズンサイエンス(Citizen science)として、市民参加型の調査・研究を発展させることにより、地域の自然の成り立ちの解明と市民の意識の向上を図ることができると考えられる。