| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-122 (Poster presentation)
竹林はかつて密度管理と拡大防除がされていたが、近年は放棄されることが多くなり、暗く生物多様性の低い竹林が増加している。竹林の植生回復に利用されることもある埋土種子は、竹林では広葉樹林と比べて少ないとされている。本研究では竹林への種子散布数を調査し、広葉樹の混交林と比較すること、実生・稚樹を調査し竹林と混交林での動態の違いを明らかにすることを目的とする。
調査は滋賀県彦根市犬上川河口付近の河辺林で行い、475 m2から400 m2の調査区を13ヶ所作った。調査地ではマダケ(Phyllostachys bambusoides)が混交林に侵入している。散布種子数の調査として調査地の竹林と混交林に開口部面積0.2m2の種子トラップを約1年間設置し、鳥散布種子数を計数した。種子散布者の鳥類について、11月12月にポイントセンサス法を用いて調査し、竹林と混交林に出現する個体数を比較した。実生・稚樹調査は春と秋に行い、調査区内100m2の範囲の実生および稚樹を記録した。
鳥散布種子数は平均で、混交林に17種125.4個/m2、竹林に11種50.2個/m2散布され、竹林より混交林の方が多くなった。果実食鳥は混交林に13種12.1羽/h、竹林内に7種4.2羽/h出現し混交林で多くなった。竹林は止まり木となる高木がなく果実食鳥の出現が少ないため、混交林と比較して散布種子数が少なくなったと考えられる。春の実生・稚樹数は、エノキ( Celtis sinensis )のみ混交林が竹林より多くなったが、アオキ(Aucuba japonica)などの他種には差がなかった。春と秋の実生・稚樹数を比較すると、エノキは混交林内では春から秋にかけて個体数が大きく減少したが、竹林内では減少率が小さかった。アオキは、混交林内、竹林内とも減少率が小さかった。混交林内の実生・稚樹数は、林床が暗いため春から秋にかけて減少したと考えられる。