| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-123 (Poster presentation)
ニホンザルは液果の種子散布者として知られている。一方で、散布過程で相当量の種子を噛み砕くため、糞中の健全種子の比率は植物種および個体間で大きく異なる。ニホンザルは顎のサイズに応じて咀嚼力が増すため、体サイズ(および年齢)や性別によって、種子散布において果たす役割が大きく異なる可能性がある。
本研究では、屋久島のニホンザルとヤマモモを対象に、サルの性別および体サイズと糞中種子の健全率との関係を検討した。
2015年5月〜6月のヤマモモ結実期に、屋久島西部林道にて、できるだけ多くのサル糞を集め、糞中種子の数と健全率を調べた。糞の直径を体サイズの指標とし、糞由来DNAから性判別・個体判別を行った。糞中種子と樹から採取した種子の形質比較からサルの選好性を明らかにした。
種子健全率は、糞直径や性別・齢級と関連していなかった。一方健全種子数は、直径が大きい糞ほど多かった。また、直径が大きい糞に含まれている種子ほど、内果皮が厚い傾向が見られた。内果皮の厚さは果実の大きさや成熟度と相関していた。
以上より、体サイズ・性別と種子の健全率には関連がなかった。しかし、体の大きいサルは高い発芽能を持つと予想される成熟果を選択し、排泄する健全種子の絶対数が多いので、小さいサルより有効な種子散布者である可能性がある。