| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-124 (Poster presentation)

クモタケはオカダンゴムシの食資源となりうるのか?

*小林一樹(千葉科大院・危機管理),安藤裕萌(筑波大院・生命),小野文子(千葉科大・危機管理),柴原壽行(千葉科大・危機管理),吉川泰弘(千葉科大・危機管理),糟谷大河(千葉科大・危機管理)

クモタケNomuraea atypicola は国内では主にキシノウエトタテグモLatouchia swinhoei typicaに寄生する昆虫寄生菌の一種である。日本国内では6月の梅雨時期から9月の上旬にかけて蘚苔類に覆われた地表部や木の根元付近に発生する。一方で、オカダンゴムシArmadillidum vulgareは国内において広く分布する等脚類の一種であり人家の庭先や石の裏などに生息する。オカダンゴムシの食性は幅広く、きのこ類を摂食(菌食)することも知られているが、その報告例は非常に少なく、特に昆虫寄生菌類を摂食するか否かについても明らかとなっていない。そこで本研究ではオカダンゴムシにクモタケを摂食させその排泄物や消化管を観察することによって、摂食の有無や摂食部位の嗜好性を明らかにした。さらに、オカダンゴムシがクモタケを摂食することによって起こりうる、クモタケの分生子分散の可能性について考察した。

オカダンゴムシにクモタケを摂食させ排泄物や消化管の内容物を光学顕微鏡下で観察した結果、オカダンゴムシはクモタケを摂食することが明らかとなった。また、摂食部位ごとの嗜好性については分生子の多い部分よりも菌糸に覆われた宿主部分を好む傾向が認められた。また、排泄物中には損傷の少ない分生子が多く観察されたことから、クモタケの分生子はオカダンゴムシの消化管内において消化されることなく体外に排出されて再び環境中に戻っている可能性が示唆された。


日本生態学会