| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-127 (Poster presentation)

果実様の花香を放つチェリモヤ:ケシキスイを利用した送粉戦術

*菱川雄紀,堀本栄枝,秋野順治(京工繊大),塚田森生(三重大),樋口浩和(京大)

南米原産の熱帯果樹であるチェリモヤAnnona cherimolaは、その花が一般的な果実によく似た芳香を示し、その花香成分には果実由来の香気成分に類似した物質が多数含まれている。元来は果実食であるケシキスイムシ科甲虫のクリイロデオキスイCarpophilus marginellusやモンチビヒラタケシキスイHaptoncus ocularisがチェリモヤを訪花することから、チェリモヤはその果実様の匂いを誘因とする受粉戦略をもつものと考えた。本研究では、この仮説を検証するため、チェリモヤ花香によるモンチビヒラタケシキスイの誘引性を調査した。匂いに対する同ケシキスイの定位性を評価するために風洞装置を自作し、同時に提示した匂い源入りの褐色バイアル瓶と対照区の空瓶に対する個体別の行動を観察した。匂い源には、ケシキスイが餌として好むような一般的な果実5種と、他種昆虫による訪花が確認された花3種を用いた。導入個体がどちらか一方の瓶に入いるか、開始後30分経過するまで観察を続けた。また、匂い拡散による行動への影響を評価するため、一定の風量を与えたときの行動も観察した。モノトラップで回収したバナナ果実香のエーテル溶液あるいはエーテルのみを処理したゴム栓各1つを同時に提示し、風下側から導入した個体の行動を5分間連続的に観察した。活栓の周囲半径2cm以内への侵入を定位とみなし、定位に要した時間と侵入方向を記録した。その結果、ケシキスイは、花よりも一般果実に定位し、バナナの香気成分にも有意に定位することが判明した。バナナ香気中にはチェリモヤ花香にも含まれる多種のエステル類が含まれることから、エステル類を誘因とする可能性が高い。同装置を用いて、チェリモヤ花香の主要成分による誘引性も調査中である。


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