| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-128 (Poster presentation)
近年、シカの個体数が増加し森林に対して大きな影響を与えている。シカによる樹皮食は、樹種間で大きく異なることが知られているが、シカの樹皮に対する嗜好性を決定している要因はよくわかっていない。この研究では樹皮の形質を物理特性から化学特性まで網羅的に測定し、機械学習法の一種、ランダムフォレスト法により全ての形質を説明変数とすることで、シカの樹皮剥ぎの頻度が形質から説明可能か検証した。
シカの樹皮剥ぎのデータが蓄積されている北海道大学苫小牧研究林において、共存している29種を対象に機能形質を測定した。物理的な形質として、樹皮の厚さ、密度、樹皮を幹から引き剥がすのに必要な力(剥離強度)、一度に剥がれた樹皮の長さ(剥離長)を測定した。化学的な形質として可溶糖分、デンプン、タンニン、フェノール、炭素、窒素の含量および含水率を分析した。物理形質、および現時点で分析が完了している可溶糖分、デンプン、それらを合計したTNCを説明変数として樹皮剥ぎの頻度・有無を予測した。
樹種ごとの樹皮剥ぎの頻度の予測は低い精度に留まったが、樹皮剥ぎの有無の予測はある程度可能であった。樹皮剥ぎの有無の予測に形質は、剥離強度、外樹皮の含水率、DBHに対する相対的な外樹皮の厚さの順に重要であった。幹から樹皮を剥がしやすく、外樹皮が薄く、含水率が高い樹種が好まれる確率が高かった。発表では、タンニン、フェノール、炭素、窒素の含量も加えた結果を考察する。