| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-130 (Poster presentation)
林内に多い虫害堅果も貯食散布に組み込まれている可能性があり、実態の把握には森林性ネズミの虫害堅果選好性の精査が必要である。しかし、堅果内部の幼虫の有無や加害昆虫種の違いは見過ごされがちで、切開を要する虫害パラメータ (幼虫の個体数やサイズ、子葉の摂食率など) については事前に把握不能だった。本研究では、CTスキャンで透視した虫害堅果をネズミに供試し、内部状態がネズミの選好性に与える影響の解明を試みた。
クリの虫害堅果を用い、外観から幼虫の有無 (幼虫入り、脱出済み) と昆虫の種類 (ゾウムシ類、ガ類) を判定し、4つのカテゴリーに分けた。その虫害パラメータをCTスキャンで非破壊的に定量化した。林内で餌台上に堅果を供試する際は、ネズミの行動 (餌台上で近くにある堅果を嗅ぎ比べて持ち去る) を考慮し、2つのパターンで堅果を配置した。すなわち、①ランダム配置 (各カテゴリーを隣り合わないように交互に配置) と②グループ配置 (カテゴリー毎にまとめて配置) を実施した。
どちらの配置パターンでも、主にヒメネズミとアカネズミが餌台から堅果を持ち去り、ゾウムシ類による加害堅果および子葉の摂食率が低い堅果に高い選好性を示した。内部幼虫の個体数やサイズは選好性に影響しなかった。つまり、虫害を受けたクリ堅果でも、ゾウムシ類による摂食や子葉が多く残された状態であれば貯食散布に組み込まれる可能性が高いと考えられる。ネズミによる虫害堅果の選好性に影響を与える要因として、先行研究では堅果内の幼虫の有無が挙げられてきたが、本研究で加害する種子食昆虫相と幼虫による子葉の摂食状況も重要であることが初めて実証された。