| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-138 (Poster presentation)

ナラ枯れ発生後の里山におけるツキノワグマの出現パターンにブナ科堅果類の豊凶が与える影響について

今川未悠*(長岡技大・工),望月翔太(新大・農),小林誠(キョロロ),鈴木誠治(北大・農),今村舟(Wiron),山本麻希(長岡技大・工)

ツキノワグマ(Ursus thibetanus)の冬眠前の重要な餌資源である堅果類は、年によって結実量に豊凶があり、特にブナはその豊凶の差が大きく、広範囲で同調することが知られている。近年、ナラ枯れ被害が発生し、新潟県では平成16年以降県内の広い範囲でミズナラ、コナラが枯死している。これによりツキノワグマの秋の餌資源が減少し、ブナが凶作の年に餌を求めクマの大量出没が発生している。新潟県では平成18年と22年のブナが大凶作の年には400頭以上のクマが捕殺された。

本研究の調査地である新潟県糸魚川市は平成22年のナラ枯れ被害が4万本と大発生した地域で、北アルプス個体群に属するツキノワグマの生息密度も高い地域である。そこで本研究では、ナラ枯れにより秋のブナ以外の堅果の餌資源が減少した糸魚川地域においてツキノワグマの出没パターンにブナ科堅果類の豊凶が与える影響について調べた。

NPO法人新潟ワイルドライフリサーチは、クマの生息密度推定のため糸魚川地域に32か所のカメラを設置し、餌誘引を実施した結果、クマが撮影された回数は、2013年(ブナが並作)に21回、2014年(ブナが凶作)は58回であった。またカメラを設置した地点を含む20m×20mの方形区内の植生調査と撮影頻度のデータから2013年(並作)は、8月頃、スギ林や雑木林など様々な場所でクマは撮影されたが、2014(凶作)は、9月以降クルミ林で多く撮影された。また、現地調査中、クルミ林でクルミの殻が含まれたクマ糞を23個採取したことから、ブナ凶作年にクマはクルミ林での撮影回数が増加している可能性が示唆された。


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