| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-140 (Poster presentation)
植食者の成長速度は、餌となる植物の量や質により変化する。しかし、多様な餌環境に対する植食者の成長応答はよく分かっていない。例えば、湖沼の代表的な植食者であるDaphnia(ミジンコ)の成長速度は、栄養元素(リンや窒素)含有量の低い緑藻種や珪藻種を単独で餌とした場合には低下するが、これらの藻類種を混合して与えた場合には高い成長速度を示す。このような結果は、複数の藻類種が組み合わさることで、餌全体の栄養価が増大するか、あるいはそれら餌に対する同化効率が上昇することを示唆している。一般に餌の同化は消化プロセスに依存するが、植食者の餌環境変化に対する消化応答、特に消化酵素の応答に関する情報は極めて少ない。そこで本研究では、餌となる藻類種やその組み合わせによって植食者の消化酵素活性が異なるか、また異なるとしたらどのような酵素の活性が変化するのかをDaphnia pulicariaを用いて調べた。具体的には、餌として緑藻、珪藻、藍藻をそれぞれ1種用い、糖、脂質、タンパク質分解において作用する酵素の活性を、近年開発された分析感度の高い蛍光法を用いて定量した。実験にあたっては生後6日目の個体を用い、(1)餌藻類種、(2)餌量、(3)餌のP-N含量の条件を組み合わせ、各餌条件に対する消化酵素活性の応答を調べた。その結果について報告し、餌環境変化に対する植食者の消化応答について議論する。