| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-148 (Poster presentation)
食害を受けた植物は、以降の食害を妨げる誘導抵抗性を導き適応度の低下を防いでいる。また、植物間コミュニケーションという現象が報告されており、被害を受けた個体(ドナー)だけでなく、ドナーの放出する揮発性物質に曝された無傷の隣接個体(レシーバー)でも誘導抵抗性が生じることがある。しかし、揮発性物質のみの情報では、ドナーの植食者がレシーバーにも被害を及ぼすのか、また被害を受けるまでの期間は分からない。そのため、ドナーとレシーバーでは、誘導される抵抗性が異なる可能性がある。
これまでに植物間コミュニケーションを確認したハンノキでは、人為的に葉を切除した場合と揮発性物質に曝した場合では被害の減少する期間が異なった。そこで本研究では、ハンノキの野生集団を無処理、切除処理(葉を切除)、曝露処理(葉を切除した個体からの揮発性物質に曝露)の3グループに分け、食害の量だけでなく、抵抗性に関わると考えられる含水率やLMA、トリコーム密度についても測定を行った。その結果、含水率とLMAでは処理間で差は認められなかったが、処理から46日後にトリコーム密度が処理間で異なった。また、同時期に食害量も処理間で異なり、切除処理では最もトリコーム密度が高く、被害は最も少なかった。一方、無処理ではトリコーム密度が最も低く、被害が最も大きかった。また、曝露処理では、トリコーム密度及び被害の程度はそれぞれ中間であった。以上の結果から、切除処理と曝露処理で食害量が異なったのは、トリコーム密度が異なったためと考えられる。このことから、ドナーでの直接的な被害が誘導する抵抗性と、レシーバーでの揮発性物質の受容によって誘導される抵抗性には違いがあることが示唆された。