| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-167 (Poster presentation)

ゲノムワイドSNPを用いた小笠原諸島ムラサキシキブ属の種分化における遺伝的背景の解明

*成田智史(京大院・農), 鈴木節子(森林総研), 加藤英寿(首都大・生命), 井鷺裕司(京大院・農)

小笠原諸島ではムラサキシキブ属植物において、環境の違いに対応した分化が見られる。父島列島では3種(オオバシマムラサキ、シマムラサキ、ウラジロコムラサキ)がそれぞれ異なる植生環境に生育している。一方で他の島嶼部ではオオバシマムラサキのみが知られるが、聟島と母島列島では種内に葉形質・開花期・樹高に変異が見られる。また栽培環境においても野外集団で観察される葉形質が維持されていることからオオバシマムラサキの表現型多型は遺伝的基盤に基づくものと考えられる。小笠原諸島全体における遺伝構造の存在が先行研究で示されているが、種間及び表現型多型間の系統関係は明らかではない。本研究では次世代シーケンサーを用いたゲノムワイドSNPsを用いた遺伝解析により小笠原諸島における本属の分化とそれに関わる遺伝子を推定した。

小笠原諸島のオオバシマムラサキ66個体(聟島、兄島、父島、母島、妹島)、シマムラサキ14個体(兄島、父島)、ウラジロコムラサキ14個体(兄島、父島)と、外群としてムラサキシキブ及びヤブムラサキ各1個体(京都市)の計96個体でRAD-seqを行い、集団ごとに固定した1666SNPsから種間及び集団間の系統関係を明らかにした。また新たに解読した本属のトランスクリプトーム配列を参照することでトランスクリプトーム配列中の199遺伝子座のうち32座が正の自然選択を受けており、これらが小笠原諸島における本属の分化に関与した可能性があると考えられる。


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