| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-169 (Poster presentation)

群島構造を持つ生態系での種分化と適応放散のモデル

*清水裕矢(東京大・総合文化・広域), 嶋田正和(東京大・総合文化・広域)

群島においては、種分化率や種の多様性が広く連続した生態系に比べて高いことが報告されている。例としては、ハワイ諸島におけるミツスイ(47種)やショウジョウバエ(860種)、ガラパゴス諸島のダーウィンフィンチ類(14種)などがある。群島において種分化率や種の多様性が高い理由は、適応放散がより起こりやすいからであると考えられる。

我々は、群島における高い種分化率には、群島のような空間構造、特に地理的な隔離と種の移入の効果が重要なのではないかという仮説を立てた。しかし、種分化や適応放散の理論的モデルに群島のような空間構造を明示的に導入した研究は現時点では非常に少ない。そこで我々は群島のような空間構造を導入した適応放散の理論的モデルを構築し、移入率がどのように種の多様性に影響をもたらすかを調査した。

本モデルでは、適応度を種間・種内相互作用の大きさによって決定し、連立微分方程式を用いて、それぞれの種の個体群動態と、量的遺伝学の適応勾配モデル(Lande 1979)による進化ダイナミクスを計算した。また、Mayr(1942)の生物学的種概念に則って種を定義する為に、生殖隔離の程度を決定するための交配形質を導入した。群島のような空間構造と個体群の他島への移入のモデル化には、移入を試みる個体群が隣り合う島へのみ移入することのできる飛び石モデル (Maynard Smith 1989)を二次元に拡張した格子モデルを用いた。

シミュレーションの結果、群島のような空間構造を持つ生態系では、中間の移入率において平衡種数がより高くなることが明らかになった。結論として、群島のような空間構造では一様な生態系に比べて、個体群が別の島へ移出した後に再び元の島へ戻ってくるという「出戻り効果」を通じた適応放散がより頻繁に起こっているのだと考えられる。


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