| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-170 (Poster presentation)
オオミジンコ (Daphnia magna) は淡水系に広く生息しており、環境の変化に素早く応答するという特徴から毒性学・進化学・生態学などの研究に長年利用されてきている。近年では、TALENやCRISPR/Cas9を用いたゲノム編集も可能になっているが、マーカー遺伝子と機能性遺伝子を共発現させるシステムは確立していない。そこで本研究では、原核生物で見出されたバイシストロニック発現システムのミジンコへの導入を目指した。
バイシストロニック発現システムとは、1つのプロモーターから2つのタンパク質を発現させるシステムのことで、これを真核生物に導入することで、レポーター遺伝子を用いた目的遺伝子の導入確認が可能になる。これを可能にする配列が「2Aペプチド」である。2Aペプチドはリボソームのトランスフェラーゼ活性を阻害し、ポリペプチド鎖の連結を抑制する。上流と下流の遺伝子の間に2Aペプチドを配置することで翻訳が分断され2種の遺伝子の共発現が可能となる。本研究では上流のmCherryと下流のGFPの間に昆虫のウイルスThosea asigna由来の2Aペプチド (T2A)を連結したレポーター遺伝子を作製し、2A ペプチドの機能を調べた。
このレポーター遺伝子の発現プラスミドをマイクロインジェクションによりミジンコに導入したところ、蛍光顕微鏡により赤色と緑色の蛍光を確認することができた。それに加え、mCherryとGFPが切断されていることをウエスタンブロットを用いて確認した。これらの結果は、ミジンコにおいてT2Aペプチドが機能していることを示唆している。現在、膜移行型mCherry、核移行型GFP、を利用したレポータープラスミドを作製し、共発現後の各タンパク質の細胞内での局在を調べている。