| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-226 (Poster presentation)
フェノロジーはその種の適応度だけでなく、種内・種間相互作用の強さや期間を規定するため生物間相互作用に関わる要因としても重要である。同一の種であっても、標高や緯度などの地理的スケールに沿ってフェノロジーに変異があることは一般的だが、一つの地域の中にもフェノロジーの変異は存在する。地域内のフェノロジーの変異は、注目している種の個体が移動できる程度のスケールで起こっており、空間的な生物間相互作用(例えば餌生物のフェノロジーにあわせた消費者の生息地間移動)をもたらすだろう。このような研究を始めるにあたって、フェノロジーの空間変異がどの程度あるかを定量することは重要である。そこで、長い繁殖期をもつ日本産両生類、モリアオガエル (Rhacophorus arboreus) に注目して、複数の池間の産卵タイミングの変異を示し、フェノロジーの地域内変異を定量化する野外観測を行った。
京都大学芦生研究林において、18ヶ所の池でモリアオガエルの産卵がいつ行われたかを調査した結果、4つの集水域のうち、2つでは集水域内の池間で産卵タイミングが揃っていることがわかった。他の2つの集水域内では、隣り合う池でも産卵タイミングにずれが生じていた。この結果は標高などの地理的要因では説明できなかった。さらに、産卵が時間的に集中した池では、オタマジャクシの体サイズのばらつきが小さくなっていた。体サイズは、オタマジャクシ同士の競争関係やイモリから受ける捕食圧に影響を及ぼす。よって、親の産卵タイミングは、子の生存率に影響することが示唆された。以上の結果は、この系において空間や時間的に変化する生物間相互作用を捉える上での、大きな足掛かりとなるだろう。