| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-233 (Poster presentation)
ショウジョウバエ寄生蜂には寄生した時点で宿主の成長を止めるもの(Idiobiont)と寄生した時点では成長を止めず、宿主が成長した後に消費するもの(Koinobiont)の2種類が存在する。このうちKoinobiontの寄生蜂では、宿主であるショウジョウバエ幼虫が小さいときは自らはあまり成長せず、ショウジョウバエ幼虫が成長してから、つまり前蛹になってから成長するという2段階成長戦略をとるのが適応的であろうと予想される。
本研究ではAsobara japonica、Leptopilina heterotoma、L.ryukyuensis、L.japonicaの寄生蜂4種を用いてこの予測を検証した。具体的には、幼虫期間の異なるショウジョウバエ2種(Drosophila simulansとD.rufa)に寄生させた寄生蜂幼虫の体サイズの経時変化を測定し、寄生蜂幼虫の成長率が宿主の前蛹化前後で変化するかを調べた。
その結果A.japonicaでは宿主前蛹化前に成長が一度停滞状態になり、宿主前蛹化後に再び成長率が上昇することがわかった。つまり、本種は宿主の前蛹化の何らかのシグナルを感知して成長を制御している。一方、Leptopilina属の3種では宿主の成長段階に応じた成長率の変化は顕著ではなかった。このように、寄生蜂の種によっても2段階成長の方式を取るものと、とらないものが存在する可能性がある。