| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-235 (Poster presentation)

屋久島における植生の垂直分布に着目した森林性野ネズミの種構成と生態特性の比較

*肥後悠馬 (名古屋大・農) ,本田剛章 (京都大・霊長類研) ,半谷吾郎 (京都大・霊長類研) ,梶村恒 (名古屋大・生命農)

本研究は、屋久島における異なる植生帯での森林性野ネズミの種構成を把握し、それらの生態特性の差異も明らかにする目的で行われた。調査地として、屋久島の垂直的な植生構造に着目し、①低標高域 (約400 m、照葉樹林帯)、②中標高域 (約1000 m、針広混交林帯)、③高標高域 (約1800 m、ササ草原帯)を選定した。

2015年7∼8月と10∼11月に、各調査地において、シャーマントラップを設置し、ネズミを生け捕りした。捕獲されたネズミの種、性別、体重、繁殖サインなどを記録し、指切り法で個体識別した後に放逐した。

調査の結果、ヒメネズミApodemus argenteusとアカネズミA. speciosusが確認され、調査地ごとに種構成および生態が大きく異なっていた。低標高域では、アカネズミが優占種となったが、全体的にネズミの個体数が他の標高域に比べて著しく少なかった。これに対して、中標高域と高標高域では、ヒメネズミが多く捕獲された。性比はおよそ一対一であった。中標高域まで生息していたアカネズミは、高標高域では見られなかった。このようなネズミの分布パターンには、植生や他の動物種などの生物的環境要因、あるいは気温などの物理的環境要因が関係していると考えられる。また、体重と繁殖期にも調査地間で差が見られた。特に、ヒメネズミの体重を比較したところ、標高が高くなるにつれて軽くなっていた。理由は不明であるが、寒冷化に伴う小型化が進んでいるのかも知れない。繁殖期は低標高域で冬1山型、中標高域で春秋2山型、高標高域で夏1山型であると推測され、本土で緯度勾配に沿って見られる3つの繁殖パターンが屋久島内で共存する可能性が示唆された。この結果も標高による気温の差に起因するものと考えられる。


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