| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-241 (Poster presentation)
環境DNA分析は環境水に含まれるDNA断片を検知し生物種を特定する手法として注目されている。環境DNA分析の応用が進む一方で、RNAは分解速度が速いため環境水中からの回収は困難であると考えられてきた。本研究では環境水中に含まれるRNA断片 (環境RNA) の環境水中での放出や減少、温度依存性といった基礎的知見について検証した。環境RNAを環境DNAと同様に環境水中から回収することで、環境DNA分析では困難であった生物の状態を推定できる情報が得られると考えられる。本研究では、生物から放出された後の環境RNAの分解速度を測定することで放出速度やその温度依存性について検証した。多種が混在する環境水中から対象生物のmRNAのみを特定するために、種特異的な配列をもつミトコンドリアのチトクロム b領域を対象とした。20℃と30℃の水温で飼育したコイ (Cyprinus carpio) の飼育水を採取し、飼育水と同様の温度で試料水をインキュベートした。採水直後および3,6,12,24時間経過ごとの各試料水に含まれる環境RNA/環境DNA比 (環境核酸比) を水温および時間ごとに比較した。結果、20℃と30℃の間で採水直後の環境核酸比に差は見られなかった。また、採水直後と各経過時間の間で環境核酸比に変化が見られなかったため、分解速度や放出速度の解析には至らなかった。以上の結果から、分解速度が速いと考えられていた環境RNAが長時間環境水中に存在していることが明らかになった。放出後に比較的長い時間が経過しても環境RNAは検出できたため、水試料のみから生物の生理的状態を推定できる可能性が高まったといえる。