| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-242 (Poster presentation)

ベイツ擬態におけるモデルとミミックの個体数推移に対する非線形時系列解析

*加藤三歩(鹿大・連合農),辻和希(琉大・農),立田晴記(琉大・農)

潜在的被食者であるベイツ型擬態種が得る捕食回避のベネフィットは擬態対象の密度に依存すると理論的には考えられる。すなわち、ベイツ型擬態者の密度が高く擬態対象の密度が低いときは、捕食者の学習効率が低下するため、ベイツ型擬態者が得る擬態ベネフィットは低下し、モデルもまたベイツ型擬態種と誤認識されることで攻撃を受けやすくなる。両者の密度関係が逆のときは、捕食者の学習効率が高まるため、擬態ベネフィットは大きくなる。このようなベイツ型擬態種における密度依存的ベネフィットの仮説は多くの研究者が推論を重ねたが、経験的データによる実証例はない。

本研究では、メスにベイツ型擬態する「擬態型」と「非擬態型」という種内多形を持つシロオビアゲハと、毒蝶2種(擬態型のモデルとされるベニモンアゲハとモデルである可能性も指摘されているジャコウアゲハ)の発生個体数およびビークマーク付き個体数(BM個体数、捕食圧の指標)の変動記録を2年間取り、CCMによる因果関係の推定をおこなった。

CCMの結果、ベニモンアゲハの発生個体数は擬態型のBM個体数にマイナスの、擬態型の発生個体数はベニモンアゲハのBM個体数にプラスの、ベニモンアゲハのBM個体数はベニモンアゲハの発生個体数にマイナスの因果を持つことがわかった。これらの結果は、密度依存仮説を部分的に支持するが、擬態型におけるBM個体数と発生個体数の間に因果関係がみられなかった。また、モデルである疑いがあったジャコウアゲハに擬態型との因果関係はみられなかった。


日本生態学会