| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-246 (Poster presentation)
トウキョウサンショウウオのメタ個体群における分布制限要因の解明
高木 香里、宮下 直(東大・農)
世界中で両生類の絶滅が加速している中、日本は多くの固有種を抱えており、科学的知見に基づいた保全が急務である。トウキョウサンショウウオは関東地方の里山生物を代表する日本の固有種である。しかし、宅地開発や耕作放棄、外来種の侵入などによる生息環境の減少により、絶滅が危惧されている。特に本種の基準産地であり、調査地である東京都では、絶滅危惧ⅠA類に分類されている。
本種は卵期や幼生期は山地の渓流や谷津田で過ごし、成体になると近隣の森林の林床を生息地とするため、水域から陸域に及ぶ豊かな里山生態系の指標になる。また、本種は地元の方々に愛される人気種であるため、本種の保全は同時に他の多くの里山生物の保全にも役に立つと考える。
こうした状況下で、本種の分布を制限する要因を、様々な時間・空間スケールから明らかにすることは、トウキョウサンショウウオの保全において必要不可欠である。しかし、サンショウウオにおいて、多角的なスケールから制限要因を明らかにした研究はほとんどない。
本研究では、八王子市西部地域の計43本の沢において、トウキョウサンショウウオの分布の制限要因を、野外調査から得た局所要因と、GIS情報を使って得た景観要因と、連結性の3つから突き止める。また、それらの要因を使って卵のう数を予測する統計モデルを作成する。その結果をもとに、どの生息地が保全上より重要かを予測し保全の指針に役立てることを目指す。