| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-254 (Poster presentation)
単一の動物種における生息場所パッチの大きさと生息密度の関係は、保全生態学や害虫管理の分野で注目されてきたが、動物種の生態系機能にも影響しうる。森林渓流において落葉枝が堆積したリターパッチには、リター破砕食昆虫をはじめ様々な昆虫種が生息する。これらの種における密度‐面積関係の評価や、関係性を生じる要因の検討はほとんど行われていない。本研究は、リターパッチに生息する種の野外における密度‐面積関係、および破砕食昆虫種におけるパッチの面積と好適性の関係と、生存、成長、発育、リター分解に対する密度効果を明らかにすることを目的とする。
①多摩川水系2次河川において、淵のリターパッチに生息する優占昆虫種の密度‐面積関係を調査した結果、3種の破砕食昆虫を含め半数以上が正または負の密度‐面積関係を示した。②破砕食昆虫種におけるパッチの面積と好適性の関係を明らかにするため、水槽に面積の異なるリターパッチを設置し、昆虫を複数個体導入して各パッチにおける定着個体数を10時間追跡した結果、ヤマガタトビイロトビケラ幼虫について小面積のパッチに対する選択性が示された。③破砕食昆虫であるコカクツツトビケラ種群幼虫について、野外より低レベルの5段階の密度処理を設定して4週間の飼育実験を行った結果、摂食速度、成長速度、蛹化率、リター分解率に対する負の密度効果が示された。
②と③の結果から、破砕食昆虫種の密度‐面積関係には、パッチの好適性と負の密度効果が関与するといえる。①で示された、破砕食昆虫種の正または負の密度‐面積関係は、生息域のパッチ面積分布がリター分解を左右しうることを示唆する。ただし、破砕食昆虫種が高密度に達した場合には、理想自由分布の生成とリター分解に対する負の密度効果により、パッチ面積分布の効果は消失する可能性がある。