| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-256 (Poster presentation)
オオミジンコ(Daphnia magna)は、混み合うと成熟サイズが小さくなり大型の子を産むことが知られている。これに関連してビテロジェニン遺伝子(VTG)の転写量増加が報告されている。しかし混み合い応答に関する詳細な作用機序は不明のままである。VTG遺伝子の5'上流領域にはエクジソンレセプターと幼若ホルモンレセプターの結合する配列が存在するため混み合いに伴うVTG遺伝子の転写量増加は脱皮ホルモン活性と幼若ホルモン活性の増減に応答した結果であると考えられる。本研究では混み合いによる脱皮ホルモン関連遺伝子と卵黄形成関連遺伝子の経時発現量解析を行うことで、オオミジンコの混み合い応答メカニズムを明らかにすることを目的とした。実験にはフロースルー装置を用い、餌不足と代謝産物の蓄積を排除した。混み合い条件(10ind/50-ml)と非混み合い条件(1ind/50-ml)で、4から6令のそれぞれの令において脱皮直後12時間おきにサンプルを採取し、脱皮ホルモン生成遺伝子(neverland1, shade)、脱皮ホルモン受容体遺伝子(USP)、脱皮ホルモン抑制遺伝子(Cyp18a1)、卵黄形成関連遺伝子(VTG1, VTG2)、幼若ホルモン受容体遺伝子(Met)、幼若ホルモン抑制遺伝子(JHE)の発現量をリアルタイムPCRにより解析した。結果は、4令と5令でのみ解析が終わった。VTG1とVTG2では混み合いによる変化は4令では認められず、5令になると令期の後半に混み合い条件で発現量が多くなった。一方、混み合い条件においてJHEでは発現量の減少が、Cyp18a1では発現量の上昇がそれぞれ見られた。ただし、これらの遺伝子の発現量変動が幼若ホルモンおよび脱皮ホルモン活性にどのように影響しているかは今のところ不明であり今後さらなる研究が必要であると思われる。