| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-257 (Poster presentation)

琵琶湖産カイアシ類Eodiaptomus japonicusにおける呼吸速度の温度関数:馴化温度と体重の影響

*Liu, X., 伴修平(滋賀県大・環境)

カイアシ類の生活史特性は水温に大きく影響され、その生理的応答は生息環境に応じて変化する。従って、野外環境の変動に対してカイアシ類個体群がどのように応答するのか評価するためには、長期馴化による効果を明らかにする必要がある。本研究では琵琶湖産カイアシ類Eodiaptomus japonicusの比呼吸速度(R)について、異なる2つの温度で馴化した個体の温度に対する応答を調べ、その温度関数を求めた。実験には、15(T15)と25℃(T25)で順化した雌雄成体を用い、それぞれ8、10、15、20、25、28、30℃におけるRを測定した。またT15からのコペポダイト3、4、5期についても、それぞれ15と25℃でRを測定し、体重による影響を調べた。T15とT25において、Rはそれぞれ1.55−10.78と1.71−11.13 μLO2 mg-dry-weight-1 h-1で変動した(Q10=2.3)。Rは28℃までは指数的に増加したが、30℃では減少に転じた。Rの変動を説明するのは水温のみであり、馴化と性による影響は認められず、それぞれの相互作用効果も認められなかった。15℃でも25℃でも、Rの変動に体重による影響はなかった。結局、Rは8〜28℃(T)で、R=0.8072e0.0897T(n=144, r2=0.995)と表せた。以上のことから、本研究で求めた本種Rの温度関数は野外における個体群代謝速度を求める際に使えることが分かる。先行研究で得られた本種の成長速度(G)とRより、異なる水温・餌環境における成長効率(K2, G/(G+R))を求めた。餌が潤沢な環境ではK2は15℃でも25℃でも50%程度だったが、餌不足環境では、15℃で44%であるに対して、25℃では27%まで低下した。これは本種の餌不足・高温条件下での低成長率を示唆した。


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