| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-264 (Poster presentation)

イラガのまゆの模様とサイズは枝太さで決まる

*古川真莉子, 中西康介, 高倉耕一, 西田隆義(滋賀県大・環境)

イラガMonema flavescensのまゆは様々な斑紋を持っている。この斑紋は、明瞭なタイプとそうでないタイプなどに分けることができる。野外調査の結果、細い枝では明瞭タイプのまゆの頻度が高く、太い枝や幹では、明瞭タイプのまゆは全く形成されないこと、また、明瞭タイプのまゆは他の模様のまゆより有意にサイズが小さいことがわかっている。

まゆ模様やまゆサイズが異なる原因は、遺伝的に決まっているのか、環境要因によるものなのか野外調査だけではわからない。そこで、同一親から得られた個体を用いて、まゆ模様、まゆサイズを決定する要因を室内実験によって検証した。

野外で採集したまゆから羽化した成虫を交尾させて得られた幼虫に、シャーレ内でカキの葉を与え飼育した。老熟幼虫を枝(直径1 cmの棒)、幹(直径12 cmの棒)、またはそのままシャーレ内に付着させ、強制的にまゆを作らせ、枝の太さによってまゆ模様が変わるかを調べた。

その結果、枝では圧倒的に明瞭タイプのまゆが多く形成された一方、幹では明瞭タイプのまゆは全く形成されなかった。枝に形成させたまゆのサイズは幹に形成させたものよりも小さかった。シャーレという同一環境条件下でまゆを作らせると、全ての模様タイプが出現したが、明瞭タイプのまゆはほとんどシャーレの蓋か側面に作られていた。しかし、模様によってまゆの大きさに違いはなかった。つまり、イラガのまゆの模様とサイズは重力も関係しているが、枝の太さが大きく関与していることがわかった。


日本生態学会