| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-265 (Poster presentation)
昆虫が利用する餌資源は、多岐にわたる。とりわけコガネムシ上科に属する昆虫においては、植物食・腐朽材食・腐植食・菌食・肉食・ケラチン食・糞食といった、多様な食性を示すことが知られている。それらの食性に関する情報の多くは、観察によって蓄積されてきた。そのため、少数の断片的な観察によって、食性が評価されてしまっている可能性がある。
そこで本研究では、コガネムシ上科昆虫を対象に、食性についての従来の観察と窒素安定同位体比によって得られた食性を比較し、観察に基づく食性がどの程度支持されるかの検証を行った。窒素安定同位体比を用いることで、食性を表す一つの指標である栄養段階を数値化することができる。また、観察とは異なり、対象としている個体が摂食中もしくは摂食直後でない場合でも、食性を調べることが可能となる。
その結果、菌食・肉食・ケラチン食といった非糞食性種については、それらの食性から考えられる栄養段階よりも低い栄養段階となったことから、植食あるいは空気中の窒素固定を行っている可能性が考えられ、種の食性の幅を過小評価している可能性が示唆された。また、糞食性種については、同じ糞という餌資源を利用しているとされていたにもかかわらず、栄養段階は、種によって大きく異なった。そのため、糞食という食性におけるカテゴリーは、その食性の栄養段階の幅を過小評価している可能性が示唆された。上記の結果から、食性についての従来の観察は、食性の幅を正しく把握していなかった可能性が考えられた。