| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-271 (Poster presentation)

林分構造の違いからみたヤマネの生息地選択

*羽方大貴(筑波大・生命環境) , 藤岡正博(筑波大・生命環境系) ,俵薫乃子(筑波大・生命環境)

ヤマネの生息地選択についてのこれまでの研究では、巣場所選択のような局所スケールを除いて森林の内部構造まで評価したものは乏しい。そこで、本研究は行動圏スケールの林分構造に着目し、ヤマネの生息地選択について明らかにすることを目的とした。

調査は、関東山地の最西端に位置する筑波大学川上演習林(長野県川上村)で行った。標高約1,400m~1,790m、面積189haの同演習林は、カラマツを主とする人工林約70%、ミズナラ、カンバ類、カエデ等の天然林約30%から構成され、樹齢は約40年~60年である。ヤマネの行動圏面積(約2ha)を考慮して、2ha以上の面積を有する計31林分(天然林10、人工林21)を調査サイトとし、各サイトの中心付近に5つの巣箱を設置した。2015年8月末と9月末に巣箱を点検し、ヤマネが利用した痕跡(巣材、フン)を記録した。平行して各サイトに10m×10mのプロットを3つ設け、林冠高と森林タイプ(天然林・人工林)、および全樹木の樹種、DBH、階層(林冠層・中間層・低木層)を記録した。

2回の巣箱点検を通して、計20サイト(天然林7、人工林13)でヤマネの痕跡が確認された。ロジスティック回帰分析の結果、林冠層の樹種数および低木層の樹種数がヤマネの存在に対して有意な正の効果を示した。Akaike weightに基づく相対重要度(IOV)を求めたところ、低木層の樹種数が最も高く(0.78)、次いで林冠層の樹種数(0.62)であった。したがって、カラマツ人工林かミズナラの優占する天然林かにかかわらず、林冠層と低木層の樹種に富んでいる林分がヤマネにとって好適であると思われる。


日本生態学会