| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-273 (Poster presentation)

捕食者であるヤマカガシの存在によるツチガエルのdistresscallの変化

*松尾遼馬(九大院・シス生),吉村友里(九大院・農),粕谷英一(九大・理・生物)

捕食者-被食者の関係において、被食者は捕食される前や捕食されている最中に様々な反応を示すことで捕食回避を行っている。鳥類や両棲類などでは捕食者に捕まった際にdistress callと呼ばれる鳴き声を発することが知られており、これは求愛の際に発する鳴き声などとは異なる特徴的な鳴き声である。distress callは自身や同種他個体に対する捕食回避に利用されているという仮説が提唱されているが、実際に捕食回避に役立っているかどうかはほとんどわかっておらず、distress callを出す頻度などに影響する条件はまったくわかっていない。この条件を明らかにするために、本研究ではツチガエルをdistress callを出す被食者として、ヤマカガシとシマヘビを捕食者として用い検証した。ヤマカガシは本種を食べることができるが、シマヘビは本種を食べることができない。捕食者が存在しない状況を経験させた後に実験者が肢をつまむなどして刺激を与えた時と、近くに捕食者が存在する状況を経験させた後に刺激を与えた時で、ツチガエルのdistress callの鳴き方に変化がないかを調べた。結果、ヤマカガシが存在する場合の方が、存在しない場合に比べdistress callを出す割合が有意に高いことが明らかになった。これから、ツチガエルは捕食者が近くに存在すると、その存在を認識して咬みつかれる前にあらかじめdistress callを出しやすい状態になっていることが示唆された。


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