| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-277 (Poster presentation)
多くの動物は、口や肢を使って餌を分解してから食べる。このような行動は、大きな餌を口に入るサイズにしたり、有毒部位や難消化部位と可食部を選り分けたりすることを可能にし、食物の利用可能性を広げる。一方で、ヘビは餌を分解せず丸呑みすることに特化した動物であるが、3500種を超えるヘビのうち、少ないながらも数種の例外が知られている。ミズヘビ科の2種は、カニの肢の基部や胴体を千切ることで、丸呑みできない大きさのカニを餌として利用している。また、ホソメクラヘビ科の2種でもシロアリの頭部を残して腹部と胸部のみを捕食することが報告されている。これらの2つの科に加えて、今回新たにメクラヘビ科のブラーミニメクラヘビIndotyphlops braminusでも餌を分解して食べることを発見した。本種の幼体がシロアリを捕食する際には、ほぼ全てのシロアリの頭部を切断して胸部と腹部のみを食べる行動が観察されたのに対して、成体のシロアリ頭部の切断率は50%程度に低下し、残りの50%は丸呑みしていた。口の小さな幼体はほぼ全てのシロアリを切断することから、幼体の頭部切断行動にはシロアリの硬い頭部を取り除き、呑み込み易くする機能があると推察される。また、シロアリ捕食後の成体の糞を観察したところ、未消化のシロアリ頭部が含まれていた。シロアリの頭部はクチクラ層が厚く消化しにくいと考えられることから、難消化部位である頭部を残すことで、栄養価の高い部位を一度にたくさん食べられるようにするという利点もあるのかもしれない。また、シロアリの兵隊アリの頭部にはしばしば防御物質が蓄えられているため、有毒物質を除去するためにシロアリ頭部を切断している可能性もある。頭部切断行動の意義に関するこれらの仮説を実験的に検証した。