| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-283 (Poster presentation)
シジュウカラ科鳥類(Paridae;以下,カラ類)は,北半球に広く分布する鳥類グループであり,大部分の鳥類と同様に一夫一妻の配偶システムを持っている。抱卵や抱雛,巣の掃除は雌親が行う一方で,雛への給餌や糞の排出は雌雄両方の親が行うなど,雌雄の親鳥がいくつかの点で分業をしながら協同で育雛を行うことが知られている。育雛行動の中で,給餌は頻繁に行われるため,特にコストがかかる世話の一つであり,雛への給餌量はその生存や成長に大きく影響する。そこで今回,同所的に繁殖を行うカラ類3種,シジュウカラParus minor,ヒガラPeriparus ater,ヤマガラPoecile variusを対象に,給餌行動を中心とする育雛行動についての雌雄間比較を行った。
調査は,愛知県豊田市にある名古屋大学稲武フィールドの40–60年生のスギ人工林で行った。調査地内の一部にはヒノキやアカマツがあり,また,林内や周縁の尾根,沢沿いの一部には広葉樹パッチが点在している。林内には,2011年に20個,2012年以降は約60–70個の巣箱を設置している。巣箱を利用したカラ類を対象に捕獲を行い,抱卵斑の有無により親鳥の雌雄を判別し,色足環を装着して外見から個体識別を可能にした。給餌行動の観察のために,餌要求量が最も多い11–14日齢時に,巣箱の出入り口をデジタルビデオカメラで約9時間連続撮影し,その後画像から,親鳥が運んできた食物の種類,時刻,回数,巣滞在時間を,つがいごとに雌雄間で比較した。
雌雄の給餌回数の割合はつがいにより差がみられたが,シジュウカラとヒガラでは,雄が約50–70%,逆にヤマガラでは雌が約50–80%を占めていた。本発表では,これらのカラ類3種において,雌雄の給餌割合に差がみられた要因を検討した。