| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-284 (Poster presentation)

シジュウカラ・ヤマガラにおける給餌様式と雛間競争

*早瀬晴菜, 近藤 崇, 肘井直樹 (名古屋大・生命農・森林保護)

未熟な状態で孵化する晩成性の鳥類にとって、親の給餌は適応度に大きく影響する要素である。しかし、親の給餌量は有限であるため、一般に一度に複数の雛を育てる晩成性鳥類の親は、複数雛へ効果的な餌配分をする必要がある。先行研究により、1回の給餌行動単位では、親は、雛のbeggingや位置取りなどの競争行動や、雛の体サイズに基づいて給餌雛を決定することが知られている。しかし、その給餌行動の繰り返しで決まる1日あたりの餌配分や、配分された餌の量に依存すると考えられる雛の成長にまで着目した研究は、これまで行われていない。本研究では、雛間競争と給餌の進化生態学的意義を明らかにするために、典型的な晩成性鳥類であるシジュウカラ科の近縁2種を対象として、つがいごとにこれらの行動観察を行った。

調査は、愛知県豊田市の名古屋大学稲武フィールドの40~50年生のカラマツ人工林で行った。林内に約20 m間隔で巣箱を設置し、営巣したつがいについて、雛の体重測定と巣内カメラによる撮影を複数回行った。記録された映像から、雛の競争行動と親の餌配分を評価した。

その結果、シジュウカラ、ヤマガラいずれも、雛の競争行動は給餌されやすさに影響することが確認されたが、ヤマガラはシジュウカラに比べて、巣内での雛の位置の影響は弱かった。次に、雛の競争行動、体サイズと各雛への餌配分の関係では、雛間の競争行動、体サイズの違いが餌配分に影響するつがいと、影響がみられないつがいがあることがわかった。さらに、1日の餌配分と雛の成長の関係を調べたところ、シジュウカラでは給餌回数が多かった雛は大きく成長したのに対し、ヤマガラでは、そうした関係はみられなかった。本発表では、これらの結果から、カラ類2種の給餌様式と雛間競争における共通性、異質性を考察する。


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