| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-292 (Poster presentation)
ヤマトシロアリReticulitermes speratusのコロニーは雌雄の有翅生殖虫(王、女王)のペアにより創設される。コロニーを構成する個体は形態や行動特性が異なるカストに分かれている。本種の初期コロニーには、繁殖を行なう生殖カスト(王、女王)と、繁殖を行なわず兄弟姉妹の繁殖を助ける利他的なカストである非生殖カスト(ワーカー、ソルジャー)が存在する。同属の別種では、野外で成熟したコロニーの近傍に創設直後の初期コロニーを配置すると、初期コロニーの個体が高頻度で殺されることが知られる。野外でのコロニーの分布を考えあわせると、本属の初期コロニーは激しい種内競争にさらされているといえる。コロニー間の接触、闘争の際には、侵入した個体が繁殖を行なう生殖カストか、非生殖カストかによって初期コロニーの行動が変化する可能性がある。
本研究では、コロニー間へ侵入する個体の違いによって、初期コロニー内の個体の行動の変化を調べるため、初期コロニーを飼育する容器内に異なる種のワーカーまたは同種別コロニーの様々なカストの個体を実験的に導入し、初期コロニー内の個体の攻撃行動をビデオ撮影によって観察した。
初期コロニー内のワーカーは導入した全てのカストの個体に対して攻撃したが、生殖虫は同性の生殖カストを導入した場合に攻撃行動を起こした。行動の違いはワーカーと生殖虫の適応戦略の違いを反映するものと考えられる。少数ではあるが導入した生殖カストが生き残り、初期コロニー内にいた生殖虫を殺し、生殖虫の入れ替えが起こったコロニーもみられた。一般化線形混合モデルへの当てはめとモデル選択の結果、導入した個体の生存率はその個体のカストの違いによる影響を受けることが分かった。