| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-294 (Poster presentation)

オオアシトガリネズミの野生下及び飼育下における行動

*黒田祐樹¹,小森茜²,下井岳²,亀山祐一¹ 1:東農大院生物 2:東農大生物

我々はトガリネズミ形目オオアシトガリネズミの実験動物化を試みており、その基礎となる生態学的な情報を収集している。前回大会ではラジオテレメトリーで調査した行動圏を報告したが、発信器が平均体重約10gの5%を越える0.65gであったため、行動圏を狭くした可能性もある。今回はより軽量な発信器で再調査すると同時に、飼育個体と行動を比較して、同種の行動特性について考察した。

網走管内で墜落缶により捕獲した生体は、尾の被毛で当年生まれを選抜し、体毛ゲノムのPCRで性判別した。0.3gの発信器を装着した♀1、♂7(体重8.5~9.7g)は、捕獲後24時間以内に捕獲地で放獣した。推定位置は同時2点測量で、1時間毎に24時間、3時間毎に24時間、計48時間定位した。また、1時間毎の推定位置の間隔を移動距離とした。飼育は46×26×29cmの衣装ケースに乾草、巣箱を置き、飼育1ヶ月の♂6、♀4の行動を赤外線カメラで記録した。

テレメトリー調査の最外郭法による行動圏は、7月500、1,940、1,110㎡、8月1,790、2,080㎡、9月2,740 、5,740、4,940㎡であった。今回の平均行動圏2,605㎡(サッカーピッチ半面程度)は前回の703㎡よりも広く、より本来に近い行動圏を示したと思われる。すべての個体でほぼ終日の移動が観察され、夜間の移動が多いもの、さほど多くないものが見られた。秋の行動圏拡大は、個体数と餌の減少を反映したと考えている。飼育個体でもほぼ終日の行動は観察され、夜行性の強い4頭、弱い5頭に分けられた。オオアシトガリネズミはほぼ1日を通して活動すること、夜行性の強い個体と弱い個体のいること、活動パターンは飼育導入後も維持されることが示された。


日本生態学会